スウェーデン若者事情

 あるところで、北欧には「ひきこもり」がほとんどいないという話を聞いて、どうしてなのかなと、調べてみました。

『若者と若者政策―スウェーデンの視点』(試訳)静岡県立大学教授 津富宏では、
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hyouka/part2/k_6/pdf/tsuika2.pdf
 「若者は社会の資源であり、若者は良質な福祉を享受し社会影響を与える権利があり、若者は依存から自立への成長を支援される存在であり、最後に、若者は一様ではなく多様な存在である」という若者観が明記してありますし、

 『スウェーデンの若年者失業問題』ストックホルム大学日本研究学部助教授 小川 晃弘http://www.nira.or.jp/pdf/0801ogawa.pdf
では、2004年に成立した「決定する力-幸福への権利」(The Power to Decide - the Right to Welfare)という名の法律についての紹介があります。
スウェーデンの若者にとって幸福とは、経済的にも、文化的にも、社会的にも、恵まれた生活状態にあること、健全な身体と精神を育むこと、そして、差別やいじめなどの、いかなる抑圧行為にも巻き込まれないことだと述べている。
 これらの理念を実現していくために、大人たちにその責任の多くを求める。大人たちには、若者の自立を見守る責任がある。若者たちが自分の生き方を、自信を持って決定するという権利を行使できるように、大人たちは様々な準備をして、彼らの懸命な努力を支えなければならない。」

 若者に権利があり、その権利を守ることが、大人の責任だと、明確であることが素晴らしいなと思いました。

 いろいろな対策やプログラムも必要ですが、前提となる若者観がどうなっているかも、大きな要素となると思います。
 例えば、不登校にどう対応するかも、若者観が大きな影響を与えるでしょう。強制的にでも学校に連れてくることが優先されていた時期もありましたが、今では、登校刺激は控えた方が良いというのが主流となっています。しかし、登校刺激を避けるあまり、愛の反対である無関心・放任になってしまったのでは、良いことにならないかもしれません。実際、不登校が続いて、ひきこもりにいたっている事例も少なくないようです。

「若者は、差別をはじめその他の形態の虐待的行動から、また、犯罪やいじめを受けることから守られなければならない。・・若者が、彼ら自身の人生や地域の環境だけでなく、社会全般の発展に影響をもてる」(前述「若者と若者政策」より)という若者観があれば、登校刺激を控えるだけでなく、もっと親身な対応ができるかもしれません。いじめによって、学校に行けなくなり、教育を受ける権利を奪われているわけですから、無理して学校に来なくても良いよという対応だけではなく、彼らの教育を受ける権利を保障する取り組みが必要なはずです。暴力的な強制でもなく、無関心な放任でもないやり方があるはずですし、そうしない限り、彼らの権利が守られているとは言えないでしょう。

仕事を通して社会に貢献していくことが若者の権利であるという立場に立つことができれば(若者だけでなく、みんなの権利ですよね)、若者支援のプログラムももっと充実することでしょう。そしてもちろん、休息する権利もあり、家庭と仕事を両立する権利もあるはずです。このような権利に私たち一人一人が目覚めて、仕事をみんなで分かち合って、若者にとっても、大人にとっても、もう少し暮らしやすい世の中を実現したいものです。