勤勉革命(industrious revolution)

       --ガンジーの命日に寄せて

 1月30日はガンジーの命日。ガンジーは孤独な人だったのかもしれない。あれほど盛り上がっていた糸紡ぎも、インドが英国からの独立を達成すると、ほとんどの人がやめてしまった。
 しかし、ガンジーにとって、糸紡ぎとは、英国を追い出すための手段でもなければ、貧しい人に仕事を与えて、出来上がったカディー(手紡ぎ手織綿布)を買ってあげるという慈善事業でもなかった。
 それは、工業化によって、手足を使うことを忘れてしまった一人一人が、もう一度勤勉さを取り戻して、誰をも搾取することなく、また誰の奴隷にもならない自立した生き方を取り戻すためには、避けることができない働きだった。
 そして、それなしには、非暴力の社会を築くことも不可能だった。だから、産業革命(industrial revolution)から、勤勉革命(industrious revolution)へ・・・しかし、このガンジーの思いを理解する人はほとんどいなかった。
「一人歩め、一人歩め・・・」ガンジーは、タゴールのこの言葉が好きだった。そして、それは、私自身に言い聞かせたい言葉でもある。

2月の予定 [講演とワークショップ]

2月8日(月)【糸紡ぎ】 自らの手で紡ぎ、染め、織る会 第4回
    9:00〜12:00 
  ◇会場:自然農園 たつみや(岡山県井原市)

2月13日(土) 【講演会】ガンジーに学ぶ 自分の手で紡ぐ未来 
   14:00〜16:00
  ◇会場:風と土の自然学校(山梨県都留市
     新宿駅西口から高速バスで90分です。

人としての尊厳を取り戻すために 『ガンジーの糸車』 No.43 

HP http://homepage1.nifty.com/kayoko/
広島に引っ越してきて初めての冬を迎えています。
暖冬のせいもあってか、雪も降らないし、暖かいので、冬という感じがしません。天気の良い日も多いし、実家が近くなって、栗のイガなど自然の素材も手に入る(もちろん、野菜などもたっぷりいただいています・・・)ので、染色を楽しんでいます。いろんな色の糸がたまってきています。これでどんな布が織りあがるか、楽しみです。

人としての尊厳を取り戻すために

ベーシックインカムは可能か?
フィンランドがすべての国民に毎月約10万円を支給するベーシックインカムを導入する予定であることが、話題になっていました。
 しかし、社会保障を廃止して、その財源に充てるそうです。そうなれば、医療費も無料ではなくなるでしょう。病気や傷害のある人は、働いて収入を得ることも難しいでしょうから、月10万円のベーシックインカムだけでは医療も満足に受けられなくなるのではないかと、心配です。社会保障は、弱者に手厚い保護を与えるためのものです。それを廃止して、十分な資産や収入がある人にも月10万円を支給することになれば、不平等が拡大しないかと心配です。余裕がある人の10万円を病気や傷害その他の事情を抱えた弱者に回すことが必要で、そのためには、ベーシックインカムを導入するよりも、社会保障を維持した方が良いように思われます。
 社会保障を維持したまま、ベーシックインカムを導入できれば言うことありませんが、それは現実的ではないです。日本で仮に月10万円を日本国民約1億人に支給するとすれば、10兆円が必要だからです。だから、日本の場合も、ベーシックインカムよりも、社会保障の充実を求めるべきではないでしょうか?
 ベーシックインカムが議論されるようになった背景には、機械化、IT革命によって、仕事が急速に消滅しているということがあります。その結果、失業者があふれているのだから、失業者に生きる権利を与えようという主張から始まっているようです。
しかし、生きる権利とは、お金を支給されることではなく、働く権利であると私は思います。人としての尊厳を取り戻すためにも、与えねばならないのは、お金ではなく、仕事です。もちろん、傷害などのために働けない人を支える必要があるのは言うまでもありませんが、仕事を通して、人は、社会とのつながりを実感でき、お役に立っているという貢献感を味わうことができます。そして、仕事を通して、人は成長できます。だから、傷害があってもできる仕事を工夫することも必要になってきます。バリアフリーということが言われるのも、そのためではないでしょうか?

いのちを育む仕事
 ただし、過労死するほど働かせられたり、歯車のような仕事であったり、軍需産業のような地球や社会のためにならない仕事であれば、仕事を通して貢献感を味わったり、幸せを感じたりはできませんから、仕事の質も問われます。
 ジョン・ラスキンはその著書『この最後の者にも』の中で、世の中にはいのちを育むプラスの仕事と、いのちを損なうマイナスの仕事がある。マイナスの仕事を減らして、プラスの仕事を増やさねばならないと書いています。プラスになる仕事を、みんなで分担することができれば、素敵です。障害者にも老人にも子供たちにも、それぞれの事情に応じて無理のない範囲で役割が与えられることが、一人一人の幸せにつながって行くような気がします。
 命を生み、育てること、そして、そのために必要な食料や衣類などの必需品を生産することがプラスの労働です。それであっても、自然を破壊するような生産の仕方であれば、命の基盤が損なわれますから、自然に寄り添った生産労働こそ、プラスの仕事となります。機械を使うと、素早く大量に生産できて、すばらしいことのように思えますが、衣類の生産の場合でも、染色を始めいろいろな工程で化学薬品が大量に使われています。結果的に命が損なわれることになりかねません。
 だからこそガンジーは、環境を破壊し、人々から仕事の機会を奪う機械化に反対して、手仕事を復活させようとしたのです。手仕事に代表される自然に寄り添った生産労働の中に、真の豊かさがあります。一粒の種が数百倍の実りをもたらしてくれるからです。機械は、大量に生産できるかもしれませんが、それは大量の原料とエネルギーを投入するからです。資源を製品に変え、やがて廃棄物にしているだけです。実質的には何も生んでいません。他方、種を蒔くところから始まる農業・手仕事は、自然の恵みをいただいています。無から有を生み出しているのです。自然を守り、自然の恵みを維持することが、本当の豊かさにつながります。

使うために作る
 機械に負けて、手仕事が廃れたのだから、この時代に手仕事を復活させることは夢物語だと考える人が大勢います。そして、そう考える人が、ベーシックインカム導入を主張しています。
 しかし、手仕事の復活と、ベーシックインカムの導入、どちらが夢物語でしょうか??
ベーシックインカムの財源を確保するのは、容易ではありません。他方、今日、私が糸を紡ぐことを妨げるものは何もありません。そして、続けていくなら、必ず服を手に入れることができます。手仕事の復活に懐疑的な人は、お金にならないと言います。それはその通りです。しかし、ガンジーの思い描いた手仕事が復活した社会というのは、商品を生産する社会ではありません。売るためにではなく、使うために作る労働を広めようとしたのです。
 ガンジーは、それを探求して、スワデシに行き着きました。スワデシは、国産品愛用と訳されることが多いですが、ガンジーに言わせると、それは村単位の自給自足です。目に見える関係の中で、お金を媒介とせずに、与え合う関係を築くのです。与え合うと言うよりも、ひたすら与える関係と考えた方が良いでしょう。困っている人は、必要なものをただで与えてもらえる共同体を作っていくのです。そんなことをすれば誰も働かなくなるでしょうか? 心配には及びません。人は、役割が与えられていることが、喜びであり、幸福なのですから。
 今、失業している人たちが、一番困っていることは、お金がないことよりも、社会から必要とされていない、いらない存在ではないかという孤独、孤立感です。それが、自殺の引き金にもなります。魂が喜びで満たされるような仕事が存在すれば、そして、その仕事を通して、お金を媒介としなくても、生活が保障されるなら、人は熱心に働くことでしょう。そして、与えることができる喜びを体験したなら、ますます作ることが楽しくなってくるはずです。
 だから、私は今日も糸を紡ぎます。自分の服だけでなく、家族の服も作りたいです。やがては友人にもプレゼントできるようになれたらと思うのです。家族には田圃や畑を耕してもらって、可能な限り自給ができたらなあと思うのです。そして、自給できないものは、紡いだ糸と交換で手に入れられるようになったら、怖いものはないと思うのです。

 どこまで行けるかわかりませんが、一歩ずつ、その方向に向かって歩んでいきたいと思っています。

報復の連鎖を断ち切るギフト経済の精神

「アムリットサルの虐殺では、人々は命を落としました。しかし我々は、すぐに自分たちの過ちを告白し、贖罪として断食をし、神に赦しを請うたのです。」(ガンジー

 インド独立運動において、集会中の市民にイギリス政府が派遣した軍隊が無差別に発砲したアムリットサル虐殺事件が起きたのは、1919年4月13日です。
 ガンジーは、4月13日を贖罪の日と定め、断食と糸紡ぎで過ごすように勧めました。抗議の日ではなく、内省の時としたのです。そして、悪に対して善で報いることを提案しました。
 理想論だという反論があるのは知っています。ならば、権利を主張しない、権利を放棄できる人間になる一歩として、ギフト経済の実践はいかがでしょうか? 見返りを期待しないで、与えることに徹するのです。与えることが自然界の法則だからです。命が与えられ、大地の恵みに生かされているのが、私たちです。そして、助けてくれる仲間も与えられています。そのことに気づいた人から、与える生き方を実践しましょうということです。与え損になってもよいのです。与えた相手がただ受け取るだけだったとしても、それは、その人の心に傷があったり、まだ充分に与えられていないだけかもしれません。その人もシャワーのように与えられるなら、やがては与える人に変えられていくことでしょう。
 小さな実践を積み重ねていく中で、大きなこともできるようになっていきます。ガンジーは、糸紡ぎという小さな実践を人々に勧めました。着るものがない人に衣類を提供するために、毎日1時間でも良いから、糸を紡いで服を作ろうと提案したのです。自分の時間を捧げて、糸を紡ぐ人々の中から、やがては、命までも捧げられる人々が誕生していきます。
 アムリットサルの虐殺に対して、報復という権利を放棄し、糸を紡ぐ行為によって貧しい人々を助け、自分自身を見つめる中で、憎しみを克服していきます。そのような約10年の準備期間を経て、1930年の塩の行進では、自分で紡いで織ったカディー(手紡ぎ・手織り綿布)を身にまとった人々が、殴られても殴り返さず、しかもひるむことなく海岸へ向かうのです。
 今はそこまでできなくても、与えることのできるものがきっとあるはずです。小さな愛の実践を今日始めることができたなら、この世界に小さな明かりがともることでしょう。

11月の予定 [講演とワークショップ]

11月の予定です。
11月20日(金) 長野県上田市
11月21日(土) 長野市20151121講演会案内.pdf 直
11月22日(日)〜23日(月)【コットン・レボリューション・秋の集い@東京】

【コットン・レボリューション・秋の集い@東京】
会場は両日とも東京駅八重洲口から徒歩、京橋駅直結の「中央区立環境情報センター」です。
●11月22日(日)18:00〜21:00 
綿繰りパーティ!
内容:綿繰り機をつかって、収穫したワタを種と綿にわけよう。
  片山佳代子さんを囲んでコットン・レボリューション報告会。
  (畑やベランダでの栽培エピソード、WS報告、今後やりたいこと)
  片山さんに伺う「衣の自給」からはじまる自立の思想。など
参加費:1000円
お申込:お名前、人数、ひとこと、棉の持込みあり/なしを添えて、
    ナマケモノ事務局までお申し込みください。 info@sloth.gr.jp
協力:しもつふさ学舎
●11月23日(祝)
チャルカ講習10:00〜12:00(午前の部)
      15:00〜17:00(午後の部)
      *午前の部と午後の部は入れ替えになります。
片山さんお話会13:00〜14:30
内容:ガンジーも愛用したブックチャルカを使いながらの糸紡ぎ講習です。
   ご自分で育てられた綿をつかって紡いでも構いません。
   片山佳代子さんのお話会では「ガンジーに学ぶこれからの生き方」を
   テーマに、暴力化する日本において、社会にも目を向けつつ自分の
   暮らしの中で実践できることをみなで学び合いたいと思います。
参加費:4000円(チャルカ講習+お話会、お茶付)
定員:各回15名(お話会は午前、午後の部共通プロフグラム)
お申込:お名前、人数、ひとこと、チャルカレンタル希望の有無を添えて、
    ナマケモノ事務局までお申し込みください。 info@sloth.gr.jp
協力:しもつふさ学舎 東京

10月24日は、岡山県ガンジーの話をさせていただきます。

≪和棉の収穫、ガンジーのお話会 自然農園@たつみや:片山佳代子さんをお迎えして≫

日時:2015年10月24日(土) 13時〜17時

会場:自然農園@たつみや 実習畑、自宅
  〒715-0018
  岡山県井原市上稲木町185
  TEL: 0866-62-1851 (携帯:080-3012-6636 長谷川)

参加費: 500円 (御茶、お菓子付き)

申込:お名前、連絡先のお電話をご明記の上、メッセージ、もしくはお電話で参加をお申し込みください。

https://www.facebook.com/events/459035494281731/

10月は安曇野です

10月は、安曇野です。毎年行くようになって、6年目です。紅葉の美しい季節・・・また、素敵な出会いがありそうで、今から楽しみです。

https://www.facebook.com/events/1006778269366711/

ガンジーに学ぶこれからの生き方
片山佳代子講演会
           
10月10日(土)14時〜17時@池田町シャンティクティ
参加費1000円

ガンジー思想を紹介することをライフワークに、糸紡ぎなど手仕事の重要性を伝えると共に なぜ近代化が貧富の差を生み 豊かだった暮らしを崩壊していったかをわかりやすく案内します。